新井鏡子– フォトグラファー –

「一番神経を使う難しい仕事はなんですか?」と聞かれることがあります。私は、そんな時は迷わず「結婚式!」と答えています。
新井鏡子

新井鏡子

メッセージ

こんにちは。 私はカメラマンとして、もう20年以上仕事をしています。 結婚式以外にも、雑誌や広告など様々なジャンルの撮影をしてきました。 そんな中で、たまに「一番神経を使う難しい仕事はなんですか?」と聞かれることがあります。私は、そんな時は迷わず「結婚式!」と答えています。
それは20代の頃、インドやバングラデシュに旅行したときの経験から感じたことです。 旅のスタイルはいわゆるバックパッカー。長距離バスや列車を乗り継いでの貧乏旅行です。 そんな旅も長く続くと荷物が重く感じてきます。それに道中にはスリやひったくりも多く、物の管理が大変です。そこで私は、荷物を減らすことにしました。 安宿の机の上に「再現性が高い物」「無くしても手に入りやすいもの」を順番に並べていきます。まず、服や洗面用具などの日用品は、路上の売店でもすぐ手に入るので最初に。 最後の方にパスポートやカードが並びましたが、パスポートもクレジットカードも再発行は可能です。カメラも・・無くしたら痛手ですが、帰国してから同じ機種を買うことはできます。
そうして並べていくと最後に「撮影済みのフィルム」が残りました。
「撮影済みのフィルム」と「自分の命」は並列。 何があろうと再現できないことに気づきました。
私が旅先で撮る写真は風景ではなく、その場所で出会った人がほとんどです。 あの日、あの砂埃の中、路上にいた子供の笑顔は二度と見ることはできないだろうし、タイムマシーンでもない限りその瞬間には戻れません。 また、道中ではバングラデシュ人の友人の結婚式も撮影していました。 「写真送るね」と約束した以上、持って帰らなくてはなりません。
そう考えると、そんな写真の中でも一番再現性が低いのは「結婚式」だと感じました。 もちろん、雑誌や広告の写真も再撮影は難しいですし、失敗はあってはならないことです。優劣はつけられません。でも、万が一、トラブルがあったときでもスタッフやモデルさんはプロなので、その場面を再現することは不可能ではないのです。
でも結婚式では、新郎が新婦の花嫁姿を初めて見た時の表情、花束を受け取り涙ぐむお母様の表情は嘘のない本物の姿です。その瞬間は二度と戻ってきません。 誰もがスマホという形で、いつでもカメラを持っている時代。 正直、インスタ映えするポーズの写真はお友達が撮影したほうが上手だと思います。 でも、お客様も気づかない一瞬の表情や、美しい瞬間を逃さず捉えるのは、やはりカメラマンだと思っています。 そして撮影した写真は、アルバムにすることをおすすめします。 アルバムで持っていれば停電して電気がなくても、パソコンやスマホが壊れても、すぐに見ることができます。 長い人生、思いがけない困難なこともあると思います。心が折れそうなときも。 でもそんなとき、そっとアルバムを開いてください。祝福された一日を思えば、生きる元気も湧いてくると思うんです。

経歴

  • 武蔵野美術大学短期大学部 空間演出デザイン学科卒業
  • 1991年(株)松濤スタジオ入社、退社後フリーランス。
  • 雑誌や広告で写真撮影および記事執筆。詳しくは以下参照。
  • Facebook : https://www.facebook.com/kyoncy.arai
  • Twitter : https://twitter.com/kyoncy2010
  • HP : http://studio-ten.petit.cc

スキル

  • 著述

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